ワキガ(腋臭症・腋窩多汗症)(腋臭症・腋窩多汗症)とは
腋臭症とは、腋(わき)から強い臭いが発する状態のことです。
腋窩多汗症とは、腋から汗が多量に出る状態の事です。
どちらも生活の質(QOL)に影響を与える疾患として認知されますが、その境界は非常に曖昧で、本人が気にならなければ問題にならない場合もあります。
元々外人では8割以上に体臭がある一方で、日本人で体臭がある人の割合は1割程度と言われています。
体臭への社会的な許容度が日本は海外よりも低いと言われており、腋臭症は文化依存性の疾患とされています。
また、自分に臭いがあると思い込む「自臭症(自己臭恐怖症)」という疾患も存在します。
厳密な診断基準はありませんが、自己評価と他覚的検査の乖離が著しい場合など、必要時には心療内科への紹介をさせて頂く事もあります。
ワキガの原因
皮膚にはエクリン腺とアポクリン腺の2種類の汗腺(汗を出す器官)があります。
腋窩多汗症の原因となるのは主に前者で、エクリン腺の分泌量亢進が原因であり、腋臭症の原因となるのは主に後者で、アポクリン腺の分泌量亢進が一つの原因となります。
エクリン腺は全身に存在しています。
アポクリン腺の分布はわきの下だけでなく、外耳道、まぶたの縁、鼻、乳輪、外陰部に及び、その汗に含まれる脂質・タンパク質が皮膚表面の細菌の作用で分解され特有のにおいを生むとされています。
アポクリン腺の発達には遺伝的素因、性ホルモン(思春期から発症)などが関与するほか、腋毛の量、精神的素因(ストレスや緊張など)、生活習慣(喫煙、食生活との関連)、スポーツによる発汗もにおいの発生との関連が予想されています。
ワキガの診断
腋窩多汗症の診断は、ヨードデンプン法という検査に加え、自覚症状による生活の質の低下(HDSS)を総合して行います。
腋臭症の診断は、15分間腋の下にガーゼを挟み、そのガーゼを医師が腋の臭いを嗅いで判断する、昭和大方式のガーゼテスト(5段階評価法)が日本ではよく用いられます。診断の際には、以下のような点も参考にされます。
- 家族に腋臭症の人がいるかどうか
- 耳垢が湿っているかどうか
- 腋の汗の量や色が多いかどうか
- 腋の皮膚に炎症やかぶれがあるかどうか
- 腋臭症によって精神的なストレスや社会生活に支障があるかどうか
ワキガの治療方法
腋臭症・腋窩多汗症の治療法は、保存的な方法と手術的な方法に分けられます。
保存的方法
保存的な方法としては、以下のようなものがあります。
制汗剤の使用
腋に殺菌作用や制汗作用のある薬剤を塗布することで、臭いの発生を抑える方法です。
市販の制汗剤や医療用の制汗剤があります。
腋毛の処理
腋毛を剃ったり脱毛したりすることで、汗や皮脂の付着を減らし、細菌の繁殖を防ぐ方法です。
腋毛の処理は、制汗剤の効果を高めるためにも有効です。
洗浄や消毒
腋をこまめに洗ったり、アルコールなどで消毒したりすることで、臭いの原因となる汚れや細菌を除去する方法です。
清潔に保つことが重要です。
外用薬
現在ラピフォートワイプ®️(マルホ株式会社)とエクロック®️ゲル(科研製薬)の2剤が保険適応となっています。
硫酸アルミニウム(ミョウバン製剤)も使用される事があります。
ボトックス注射
HDSS3-4の重度の腋窩多汗症に保険適応となっていますHDSS2以下の場合は、自費診療になります。
腋にボツリヌス毒素を注射することで、エクリン腺の分泌を抑える方法です。
汗の量を減らすことで、臭いの発生もある程度改善させる事が可能です。効果は数ヶ月持続します。
脱毛
脱毛により汗の滞留が改善し、臭いが改善する場合があります。
手術的方法
手術的な方法としては、以下のようなものがあります
剪除法
腋の皮膚に切開を入れて、アポクリン腺をはさみで切り取る方法です。
アポクリン腺の分泌物が減ることで、臭いの発生も減ります。健康保険が適用されます。
吸引法
腋の皮膚に小さな穴を開けて、カニューレという細い管を挿入し、アポクリン腺を吸い出す方法です。
脂肪吸引の原理と同じです。アポクリン腺の分泌物が減ることで、臭いの発生も減ります。自由診療です。
有毛部皮膚切除法
腋毛が生えている部分の皮膚を切り取る方法です。アポクリン腺とともに腋毛も除去できます。
臭いの発生がほとんどなくなりますが、傷跡が残ったり、腋の動きが制限されたりする可能性があります。
健康保険が適用されます。