乾癬(かんせん)とは
乾癬は、皮膚が赤くなる紅斑と皮膚が盛り上がる浸潤・肥厚に加えて、鱗屑(りんせつ)という銀白色の粉のようなものが出現する慢性的な皮膚の病気です。
乾癬には大きく5つのタイプがあり、乾癬の80〜90%を占めるのが、前述の症状を特徴とする“尋常性乾癬”です。
乾癬の原因
乾癬は、遺伝的素因(生まれ持った体質)と環境因子(精神的ストレス、肥満、糖尿病、高血圧、不規則な食生活、季節、感染症、薬など)の相互作用が引き金となり、免疫に異常が生じることで発症すると言われています。
乾癬の症状
乾癬の典型的な症状は、皮膚が赤くなる紅斑と皮膚が盛り上がる浸潤・肥厚に加えて、鱗屑という銀白色の粉のようなものが出現することです。
また、乾癬の患者様の多くが感じる“かゆみ”の症状がなぜ起こるのかについては、あまり研究が進んできませんでした。
乾癬の診断・検査方法
乾癬は皮疹 (ひしん)を伴う慢性の皮膚の病気であり、特徴的な皮疹の形や分布などから専門医であれば比較的容易に診断できます。
乾癬と区別しにくい症状がある場合は、皮疹の一部をメスで切り取って顕微鏡で調べる検査 (皮膚生検)を行います。
乾癬の治療方法
乾癬の治療法は、以下の5つに分かれます。治療は、皮膚症状のみの軽症例の場合、ステロイドや活性型ビタミンD3の外用治療が中心です。
- 外用療法
皮疹に直接薬を塗ることで治療効果を発揮する方法です。
ステロイドやビタミンD3などの成分が含まれる軟膏やクリームが用いられます。多くの患者様が、まずこの方法から治療を始めます。 - 光線治療
紫外線が持つ免疫の働きを抑制する力を利用し、皮疹に紫外線を照射して症状の改善を促す方法です。
PUVAやナローバンドUVB、エキシマ光線などの種類の紫外線があり、全身または部分的に照射します。
外用療法で効果が見られない場合や、皮疹の範囲が広い場合に行われます。 - 内服療法
飲み薬によって皮膚の細胞の異常な増殖を抑えたり、免疫の過剰な働きを抑えたり、炎症を抑えたりする方法です。
ビタミンA誘導体(エトレチナート)、免疫抑制剤(シクロスポリン)、PDE4阻害薬(オテズラ)などの薬が用いられます。
中等症から重症の比較的症状が重い乾癬に用いられます。外用療法や光線療法と併用することもあります。 - 生物学的製剤の注射薬
注射や点滴によって、免疫細胞の情報伝達に用いられるサイトカインの働きを弱めることで炎症を抑える方法です。
インフリキシマブやアダリムマブなどの薬が用いられます。
通常の内服療法や光線療法で、皮膚や関節症状の改善が十分に見られない場合に使用します。 - 顆粒球吸着除去療法
血液中の顆粒球や単球という免疫細胞を吸着除去することで、炎症を引き起こす物質の産生を抑える方法です。
血液を体外に取り出し、特殊な装置で顆粒球や単球を除去した後、血液を体内に戻します。膿疱性乾癬のみ保険適応となっています。
よくある質問(Q&A)
乾癬はうつりますか?
決してうつりません。乾癬の患者様は、体表の露出部に病変ができることもあり、周囲の視線を意識して生活しています。
さらに疾患名も「かんせん」と感染と同音で、誤解を生じる可能性もあります。
社会的な理解は、疾患の患者様が日常生活を営む上で極めて大切なものです。
皮膚科学を修めた専門医として、「絶対にうつることはない」と断言します。
乾癬は市販薬がありますか?
保湿剤や軽度のステロイドなどは、有効なことはありますが、乾癬の症状を改善させるには効力が弱いことが多く、また自己判断で治療法を選択すると、病状が悪化する可能性があるため推奨できません。
乾癬が頭皮にできるのは何故ですか?
髪の毛が伸びるとき皮膚刺激が生じること、知らず知らずのうちに毛髪が皮膚をこすったりすること、寝ている間に寝具とこすれたりすること、被髪部は日光の露光が弱く光線による免疫調整効果が弱いことなどから、乾癬ができやすい部位の一つと考えられています。
乾癬の原因にダニは関係ありますか?
「疥癬」というヒゼンダニにより引き起こされる疾患があるので混同されやすいですが、乾癬とダニは関係がありません。
乾癬ではその他の合併症はありますか?
皮膚症状以外には、乾癬性関節炎(関節症性乾癬)が知られています。
関節リウマチや、炎症性腸疾患(クローン病)などと合併することがしばしばあります。
汎発性膿疱性乾癬とはどういう病気ですか?
急激な発熱を伴い全身の皮膚が潮紅し無菌性膿疱が多発するまれな疾患で、皮膚症状は掌蹠膿疱症と似ているため、掌蹠膿疱症との鑑別診断が必要です。
発熱などの全身症状が強いため、入院加療が必要になるため、高次の施設への紹介となります。
難病指定されている疾患です。
関節症性乾癬とはどういう病気ですか?
乾癬の患者様の 1-20%程度に出現する関節炎です。背中や腰の関節に炎症が生じた場合は、脊椎関節炎の一種として分類される。
乾癬の皮膚症状が先行した場合、尋常性乾癬の諸症状に加え、全身の関節に炎症が起き、まず起床時に関節の強ばりを感じ、次いで痛みと腫れが生じます。