皮脂欠乏性湿疹とは
皮膚表面にある皮脂が減少することによって、角層の水分が少なくなり、肌が乾燥することで発生する湿疹、皮膚の炎症です。
角質が厚くなって剥がれかけている状態、鱗屑(りんせつ)や皮膚表面のざらつきがみられ、ひび割れによって痛みを伴う場合もあります。
皮脂欠乏性湿疹の原因
加齢などによって人間が元来もつ保湿能が低下してしまうことのほか、摩擦などの刺激や過剰な石鹸の使用などが挙げられます。
従来、高齢の方に多くみられる皮膚疾患でしたが、近年は気密性の高い都市型住居などの影響で、幅広い年齢にみられるようになりました。
皮脂欠乏性湿疹の症状
皮膚が乾燥し、かさかさして白い粉をふいたようになり(乾燥肌・乾皮症)、しばしば赤く丸い湿疹(貨幣状湿疹)やひびわれたような赤い湿疹を生じます。
また、かゆみのためかき傷が見られる場合があります。
皮脂欠乏性湿疹の診断
皮膚科医による視診により行われます。特に、冬に高齢者の腰臀部や下腿でかゆみを主訴とした乾燥性の皮膚所見がある場合には、診断は容易です。
状態によっては、他の診断と鑑別するために各種検査を行うこともあります。
皮脂欠乏性湿疹の治療方法
乾燥を防ぐことが第一で、洗いすぎると皮脂が失われるので、入浴による洗いすぎが疑われる場合はまず入浴の習慣や頻度を変えることが推奨されます。
石鹸も脱脂力の強すぎないマイルドなものを使い、よく泡だてて、タオルでこすりすぎないようにしましょう。
必要に応じて保湿剤を使用し、湿疹が起きている場合はステロイド薬を外用で使用します。湿疹が治り次第ステロイドは中止して、保湿剤の使用に切り替えることが推奨されています。皮脂欠乏性湿疹は、適切なケアと治療により完治することが可能な皮膚疾患です。
よくある質問(Q&A)
皮脂欠乏性湿疹は市販薬で治りますか?
市販薬でも、ステロイド軟膏や保湿剤は販売されています。軽症のものでしたらセルフケアで治ることもあります。
漫然と自己判断で治療を継続せず、 改善のない場合は皮膚科を受診して下さい。
目安は1-2週間で改善しない場合かと思います。
皮脂欠乏性湿疹が悪化するとどうなりますか?
湿疹が慢性化すると、掻き壊しになってしまったり、皮膚がゴワゴワした状態(苔癬化)になってしまうことがあります。
円形に盛り上がったものは貨幣状湿疹といって、高齢者の方、寒い時期に症状が出る方が多いです。
かゆみが強く掻いてしまうと、皮膚の常在菌や、タンパク質、それらの複合抗原に対して全身の免疫系が反応してしまう、自家感作性皮膚炎という疾患に移行することがあります。
皮脂欠乏性湿疹が出やすい部位はありますか?
皮脂腺の少なく、乾燥しやすい下腿や背中に出ることが多いです。
皮脂欠乏性湿疹はどのくらいで治りますか?
部位に応じて適切な強さのステロイド軟膏を使用して反応が得られれば、1週間以内に速やかに改善します。
再発しやすい疾患なので、日常のケアが大切になります。
皮脂欠乏性湿疹が広がってきた場合どうすればいいですか?
掻くことで、周囲に拡大したり、全身の皮膚症状が生じる自家感作性皮膚炎を生じる可能性があります。
塗り薬の調整や、飲み薬が必要になることもあるので、皮膚科を受診して下さい。
皮脂欠乏性湿疹と食事は関係がありますか?
皮脂欠乏性湿疹と食事の関係が明確に示された研究報告はありません。バランスの良い食事を取ることはあらゆる健康のために大切なことです。
寒い時期に増悪することが多く、血流低下などが関与している場合はビタミンEが含まれる食事を積極的に取ると改善が得られる場合があります。
ビタミンEはアーモンドなどのナッツ類、緑茶(茶葉)に多く含まれています。
皮脂欠乏性湿疹とストレスは関係がありますか?
皮脂欠乏性湿疹と食事の関係が明確に示された研究報告はありません。
一方で皮脂の分泌は、性ホルモンと密接に関わっており、性ホルモンはストレスの影響を受けることが明らかにされています。
月経不順や更年期障害などを伴う場合、ストレスが関わっている可能性があると考えられます。